場所が場所なだけあって完全に周囲に溶け込んでいるように見えた。
深く被ったニット帽も遠目からでは、ただのオタクにしか映らない。
それでも目に止まったのは…
やはり意識していたからだろうか?
…驚いた素振りも束の間。
吉本は再び画面に釘付けになった。
「何してんの?」
「見てわかんない?鉄拳だよ。」
「そりゃわかるけどさ、学校休んで一日中鉄拳やってたのかよ。」
「まあね。」
片手間に適当な相槌を打つ吉本。
食い入るように鋭くしていた目が緩むと、一勝負を終えたようで俺の相手をする。
「一人?」
「いや、友達と…さっきまでいたけど今は放置されてる。」
「ゲーム嫌い?」
「むしろ好き。けどゲーセンは落ち着いてできないからさ。」
「ああ、確かにね。」
席を立ち次なる戦地を物色し始める吉本にすかさず問い掛けた。
「なあ、お前ホントに2年だよな?」
「そうだけど。」
「何組?」
「D組。」
「でも学年主任に聞いたら吉本なんて名前の奴、2年にはいないって言ってたけどな。」
「何か勘違いしてない?」
「勘違い?」
「俺の名前は"よしもと"だよ。」
「知ってる。」
「苗字は"ふるかわ"だぞ。」
ああ、成程…
そっち系かい!



