「ちょっと待ってよ!!」




あたしはそいつの背中に向かって叫んだ。



するとそいつがクルッとあたしの方を向いた。




「そうそう。俺、神尾 仁(かみおじん)。これからよろしくな美桜。」




こんなやつから“美桜”と呼ばれてあたしは背中がゾクッとした。



ゾクッというか悪寒ってやつ?




「そんなことじゃなくて!!」




あたしは勢いよく立ち上がって言った。




「っあ。あとさ、ぶつかった時にプリントばらまいちゃったみたいなんだよね……ちゃんと片付けておけよ。」




あたしの言葉はそいつの耳に届かなかったみたいだ。


“片付けておけよ”ってことはあたしだけが片付けなきゃいけないってことでしょ?



そりゃあこのプリントに用があるのはあたしだけどさ?


ぶつかってきたのはこいつでしょ?


なのになんであたしだけが片付けなきゃいけないわけ?




「それじゃ。またな。」




そう言ってあいつはあたしの目の前からいなくなっていた。