「希の分も残ってるよ。…柴田に… 渡さないの?」




後片付けの途中、そっと美穂が声をかけてきた。




「……えっ?」



一瞬手が止まり、美穂を見つめる。



「好きなんでしょ? 柴田のこと。」





みんなが近くにいたら、『違うよー。』と誤魔化したと思う。



でも今は二人きり。


そして美穂の声は優しくて、本当に私の事を思って言ってくれてると分かる。






「うん……好き、かな。 でも… 渡さない。」


「どうしてよ、一年に一度のチャンスなんだよ?」


「渡したって、うまくいくわけないし。」


「そんなの、分かんないじゃん!」




流れる水を止め、手をタオルで拭く。



そして、ゆっくり美穂の方へ向き直った。