「遅いから危ねえんだろ! まったく… 自覚ねえんだよ。」



「何よ、自覚って。」




「あのなー…」




また大きなため息をついて、自転車は動き出した。







「心配させんじゃねーよ。……みんなに。」




「…うん。」




みんなって…




篤史も、入ってるの?





私の、都合のいい取り方かな…








膝に乗せたバッグを握りしめると、辞書に触れた。




四つ葉のクローバー…




聞いてみる?






「…柴田。」



「んー?」




「今日さ… 何か、投げた?」



「はっ? …練習でボールは投げたけど?」



「そうじゃなくて! えっと…… もういい!」





クックッと、そばにある大きな背中が上下に揺れる。




もう! ……ばか。




ちょっとだけ


背中に寄りかかった。






これだけで、いいや。




これだけで



充分、幸せ。