サボっている桐谷の横を通って体育館へ向かおうとしたら、不意に聞こえたちょっと冷たい声にあたしは振り返ってしまった。



「ねぇ、みんなに声掛けて貰えて嬉しかったの?」


「まあ、嬉しかったよ」



昨日、集合場所に集まった時なんか『天然記念物』でも見たような視線を送ってきて、誰一人話しかけてくれなかった。


――― まあ、桐谷を除いては……



「男に声を掛けられて嬉しかったの?」


「男って……
そりゃ、夏休み中だけだけど一緒の空間にいるわけだから少しでもみんなと仲良くなりたいし」



短い期間だって少しでも話せたら楽しいじゃん。


って言うか、さっきからなんなの?
『声を掛けて貰った事が嬉しかったのか』とか聞いてきて……




「今日の桐谷、変だよ?」