何もかも初めてのこんなあたしを喜んで迎え入れてくれているだなんて……


――― ウソみたい。



「あんま、気にすんな」


くしゃくしゃっと髪を撫で桐谷が立ち上がった。


「ほら、そろそろ体育館に戻るぞ。
抜けたのバレたら顧問にどっぷりしごかれっから」


そう言ってあたしに向かって手を差し出した。


でも、そんな桐谷にあたしはちょっと意地悪。



「あたしには関係ないもーん」


ちょっぴりわがまま。


「あーいーかーわー」


「だって体育館暑いんだもん」


「ドアが開いているだろ?」


「風入ってこないじゃん」



たぶん、風は入っては来ているんだろうけど……
体育館の熱気で気付けないのかな?


「あーもー、わがまま言うな。
この、バカッ」


あたしの腕を無理矢理掴んで体育館へ戻った。


ありがとね、こんなあたしを気にかけてくれて。


ちょっとは頑張っていけそうだよ。


絶対、桐谷には教えてあげないけど。