目線を朱里の方に向けると





「ぁ、ゅ、ゅぅ……」





朱里は何かを言いたげに口を開く。



その顔はいつもの赤い朱里の顔じゃなくて、真っ白な顔。



表情の無い俺に怯えているんだと思う。




怖がってることは知ってるけど、朱里の手をぐいっと引っ張って傘を持たす。



傘を持たすと朱里が驚いた顔をしてたのが一瞬見えたけど、気にすることなく俺は家の方に走り出した。





「裕太!?」





後ろから美桜が俺を呼ぶ声が聞こえたけど、

無視してただひたすら家に向かって走った。



こんなときまで聞こえるのは朱里じゃなくて、美桜の声なんだ。



雨の中をひたすら家に向かって走ったら何かが吹っ切れるような気がしたのに、

実際はそんなこと全くなくって。



頭の中はずっとさっきの朱里のことを考えてて。




初めて接触したときは男嫌いで中々触れなかったけど、

最近はあんな風に嫌がられたことなんて無かった。



だから大丈夫だって。



俺なら大丈夫だって安心してたんだ。



なのに拒否された。



俺なら大丈夫なんてこと無かった。




俺じゃ、ダメなんだ……。