女の子の顔からそれまでのスマイルがスッと消え、突き刺すような目で俊次くんをキッと睨むと、
「ちっ…!」
と舌打ちをしたのです。
(えっ!?)
女の子の突然の変貌ぶりにたじろぐ俊次くん。
気が付くと、他のレジのオバチャンたちも、皆一斉に手を止めて俊次くんを睨み付けています。
(ひっ!)
俊次くんの顔から血の気が失せました。
まるで俊次くんのまわりだけが、時間が凍り付いてしまったかのようです。
思いもよらぬ恐怖の展開に、俊次くんは、
「あの…、やっぱ、袋はいいっス…」
と、か細い声で 取り消すと、途端に女の子の顔に
「ありがとうございます」
と語尾にハートマークが付きそうなくらいのとびっきりのスマイルが戻りました。
と同時にオバチャンたちもマニュアルスマイルに戻って仕事を再開、時間は再び動き出しました。
「……!」
俊次くんはパンと紙パックを両腕で抱えると、お釣りを受け取ることも忘れてそそくさとレジを離れました。
(何だよありゃ。たたがビニール袋だろ…!?)
全身の冷や汗がまだ止まりません。
店の出入り口のガラスには、あの“エコ推進運動実施中!”の貼り紙。