「あら,葵ちゃんに愛結ちゃん。来てくれてたのね?」


「こんにちは」


会釈をすると,おばさんはニコリと笑ってロビーに案内してくれた。

赤い目でニコリと微笑んだおばさんは,芽依美に重なって見えた。




「はい,どうぞ」


おばさんから缶ジュースを渡された。



「アリガトウゴザイマス」

それを受け取り,プルタブに指をかける。

缶はとても冷たかった。


「あの子―
何か酷いこと言わなかった?」

「え…」


おばさんは続けた。


「昨日ね,あの後芽依美に言ったのよ。…病気のこと」


缶を持つ手に力が入った。


「そしたら…やっぱりショックが大きかったみたいで,
昨日から誰とも話してないし顔も見たがらないのよ」



でも,芽依美はさっき『来てくれたんだ』って…

笑顔で言ってくれたよ?


「あの子にとって,葵ちゃんと愛結ちゃんは特別だものね」


そう言って,また笑ったおばさんの瞳からは
大粒の涙が次々と零れ落ちた。



そして,私の視界もぼやけてきた。

自分が泣いていることに気付いたのは,それから暫く経ったあとだった。