「うん…別に」


‘気にしないでいいよ’


そう言いたかったんだと思う。



この様子だと,芽依美はおばさんにHIVのこと聞いたのかな。


聞いたんだよね。



「あ…のさ…。その…」

とりあえず会話をしなくちゃと思った。



いつも通りにしなきゃ…

そればかり考えていた。




「もう…来なくていいよ」


突然声を発した芽依美。

それも,すごく冷たい声。



あれ…


私,芽依美に何かしたかな…


気を遣わせちゃったかな…


わからない。


芽依美を,すごく遠く感じる。



「聞こえなかったの!?
帰ってって言ってんのよ!!」


おどおどした私たちの態度に苛ついたのか,芽依美はさっきより大きい声で怒鳴った。



「ご…ごめん」


慌てて私たちは病室を後にしようと,ドアを開けた。



「…あ」


するとそこには,芽依美のお母さんの姿があった。