≪葵Side≫

【幹元家】

ピンポーン…


インターホンを押すと,ガチャッという音と共に愛結が姿を現した。


目が,赤く腫れている。


きっと,愛結も夜中まで泣いていたのだろう。


私と,同じように。


「おはよう…,葵」


「はよ…」


挨拶だけ交わすと,沈黙が私たちを包んだ。


「行こっか…?病院」

重い口を開くと,愛結は黙って頷いた。




病院へ向かう足取りは,誰かが足を掴んでいるかのように重かった。






【総合病院】



「失礼します…芽依美…?」


重いドアをゆっくり開くと,ベッドに座っている芽依美と目が合った。


が,芽依美はすぐに目を逸らした。


「…」

なんと声をかけて良いかわからず壁際に突っ立っていた私たちに,芽依美は声をかけた。


「来てくれたんだ」


此方を見て,笑って言った芽依美。


あまりにも悲しそうな笑顔だった。



「あ…うん。体調どう?」


愛結は,言ったあとで,『しまった』という顔をした。