するとこちらをジッと見つめたのち、口元に浮かべていた表情を消した伊藤部長。


日頃は部下にも非常にフレンドリーで温厚だが、この瞬間はいつも昔の手厳しかった頃を彷彿とさせる。



「黒岩くん、……君にアメリカ本社から招集がかかった」


寝耳に水とは、まさにこういった時に感じるのだとチラつきながら、俺は言葉が出なかった。


「……わ、たしにでしょうか?」

「あぁ、そうだ。本社の試作部から君をぜひに欲しいと言われてな?
そこで一度、忙しい最中になるが1ヶ月以内に向こうへ飛んで貰うから」

彼は言い終えたと同時、はぁーと溜め息を吐き出したあと腕を組んで目を瞑ってしまった。


「ああ悪い。せっかくのめでたい話につい本音が、」

手を上げて非礼を詫びる彼に、小さく笑って見せればそこでまた目が合う。