さきほどの端的な発言――つまりは、試作部に新たな部署が正式発足したというもの。


これで部内の戸惑いやムダ解消は間違いない。嬉しさがじわりじわり、と心に届いた。



「本当にありがとうございます」

「いやいや、イライラ解消になって私も嬉しいよ」

確かに数日前の彼の苛立ちぶりを目の当たりにしていた分、返ってきた言葉はすこぶる弾んで聞こえる。


――取締役ゆえ最上階に仕事場を持っている。しかしながら、現場主義を貫く伊藤試作部長。


煮詰まった時は部長室で日々を過ごす彼が他の課長も招集せず、俺だけをここへ呼びだした理由がどうにも腑に落ちない。


「――では本日は、どういったご用件でしょうか?」

喜ばしいお知らせにもかかわらず表情を切り替えた俺は、率直に彼の笑顔の裏へ尋ねてみた。