恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

「アーラ、残念。結婚式に出席したら、最低5回はお色直ししようと思ったのにィ」

「花嫁でもねぇのに、なんでお色直しする必要があんだよ。それより、コイツの服を乾燥機で乾かしてやれよ。アイロンがけもな」

「ちょっと、ちょっとォ。なんであたしがこんなコ汚い小娘のために、主婦みたいなことしてやんなきゃなんないワケぇ?」

「おっさんは花嫁になるのが夢なんだろ? だったら喜んで主婦みたいなことやりゃあいんだよ」

相変わらずひどい言い方の彼だけど、マンゴーママはさして気にとめるふうでもない。

「いいわ、ミュウちゃんの頼みなら聞いてア・ゲ・ル♪ アンタもそんなとこ、いつまでも突っ立ってないで、さっさと中にお入んなさいよォ」

マンゴーママに呼ばれて、恐る恐る開店前のオカマバーへと足を踏み入れるあたし。


「アンタ、名前は?」

「わんこ……じゃなくて一子(イチコ)」

「ふ~ん、イチゴ(苺)っていうの?」

「苺じゃなくて、一子」

「イチゴなら同じフルーツだし、アンタ、ウチの店で働かない?」

「ヒトの言うこと、全然聞いてないし」