恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~


「う、うん……」

まだ日曜日の午前中だし、お店も営業前だろうから、お酒が出ることなんてないよね?

そう自分に言い聞かせると、あたしは恐る恐る店内を覗き込んだ。

「汚ねぇところだが遠慮すんな」



「もうヤダァ、“汚ねぇところ”なんて、ホント失礼しちゃうわァ」



……と、店内から、その第一声でソレだと分かるオネェキャラ特有のねちっこい言い回しが聞こえてきた。

でもオネェ言葉を話したのは、無精ひげをはやした、どう見てもタダのおじさんだった。

顔が面長で、南国・九州M県の知事で、タレント出身のH知事に激似だった。


「それに汚ねぇのは、ミュウちゃんが拾ってきたそのコのほうでしょ?」

「…って!?」


“そのコ”って、あたしのこと!?

たしかに髪の毛ペッタンコで、服はシワくちゃだけど、おじさんみたいなオネェになんて言われたくないっ。