恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

本名?

いや、彼が歌舞伎町のヒトってことは、お店かなんかで使ってる芸名みたいなものかも。


「あのぅ……」

……と、あたしが質問しようとすると、“ミュウ・カッコ仮名カッコ閉じる”が、あたしが言うのをさえぎって言った、

「“どこまで行くのか?”って質問ならするな。もう着いた」

彼に名前を訊こうとしたあたしになんて、てんでおかまいなしで、とあるお店に中にさっさとひとりで入っていってしまう彼。


外にひとり残されたあたしは、お店の前の看板を見た。

『BAR 禁断ノ果実』

そこにはそう書かれてあった。


「き、禁断の果実って、いかにもヤバそうなお店じゃん……」

あたしが中に入るのをためらっていると、お店のドアが開いてミュウ(仮名)が「おい、早く中に入れよ」って言った。

「で、でも……」

「安心しろ。“少女”に酒なんか飲ませねぇ。ココで服を乾かせてもらえ。あと髪の毛のセットもできるぞ」