恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~


思いがけない彼の行動に対して、あたしはどうリアクションをとったらいいのか分からなかった。

え? なに? あたし、どうしよう? こんなとき、どうしたらいいんだろ?

あ、そうだ……まずはお礼言わなきゃ……。

でも、なんて? なんて言ったらいいんだろ……?


「あ、ありがとう……」


その言葉を言うまでに10秒近くかかった。

そーだよ、“ありがとう”って言えばいいんだよ。簡単なことじゃん。

まったくの想定外だった彼の行動に、タダの“ありがとう”という言葉さえ、一瞬あたしの頭の中から完全に消失していた。

この10秒近くの時間のあいだに、“えっ? ありがとうってナニ?”とか“ありがとうなんて日本語あったっけ?”とかみたいなことさえ思っていたあたし。

つまり、それくらい彼の行動が意外だった、ってことだ。


「礼にはおよばねぇ。そんなシワくちゃの服着て、あとから付いてこられたんじゃオレがいい迷惑だから、着させてやっただけだ。それより、その服、高けぇんだから汚すなよ」