恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~


いつもはヒトに何かを頼まれるとゼッタイ「イヤ」って言えないあたしが、ほかの誰かに「イヤ」って言わせないなんて……。

そう思うと、ちょっとおかしくて笑っちゃいそうになる。

でも彼があたしのお願いをOKしてくれたのは、白ねこたんが“みゃあ”ってひと鳴き、くち添えしてくれたおかげだと思う。

ありがとニャン、ねこたん♪♪


「……ったく、オンナはズルイよな。オトコに“イヤ”って言わせねぇためのオンナの武器ってヤツを持っていやがるんだからな」

「“オンナの武器”なんて、いやらしい言い方しないでよっ」

そのちょっとセクハラチックな発言にあたしはカチンときた。

「実際、オンナの涙は“必殺技”だぜ、変身ヒーローのなんとかキックや、なんとか光線なみのな」

そう言うと、彼はジャケットのポケットから“カリカリ”……つまり、ねこたんのドライフードを取り出して、パラパラとダンボール箱の中の2匹のこねこの前にバラ撒いた。

あたしが、やはりおなかをすかしているであろう、だっこしている白ねこたんもダンボール箱に戻してあげると、合計3匹になった捨てねこたんは無我夢中でカリカリを食べはじめた。