ダンボール箱の底についた土がパラパラと、彼の身にまとった高級そうなジャケットに付くんだけど、彼はそんなことにはまったくおかまいなし、って感じだった。


「ねぇ、その子たち、どうするの……?」

「鍋にして喰うと思うか?」

また相手を小馬鹿にしたような言い方だ。

「だ、誰も食べるとは思ってないよっ。“飼うの?”って訊いてるのっ」

だから、ちょっとムカつきながら言い返していた。

「まさか。ウチにはもう7匹もいるしな。オレ、けっこー顔は広いほうだし“里親”を探してみるさ。まっ、とりあえず里親が見つかるまでは、わが家の居候ってことにはなるんだけどな」

「10匹のねこと暮らすんだ……いいなァ……あたしもねこと暮らしたい……」


きっと、そのときのあたしは、小っちゃい頃、オモチャ屋さんで着せ替え人形の高額なお洋服を買ってもらっているヨソんちの女のコのことを、うらやましそうに見ていたのと同じ目をしていたと思う。

いともたやすく、ねこたんとの生活をはじめられる彼のことが、それくらいにうらやましかった、ってことだ。