恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~




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自宅最寄り駅の改札口をスキップしそうなくらいの軽い足取りでスルーしたあたしは、駅前の歩行者用信号が青になるのを夢見心地の鼻歌まじりで待っていた。

……と、道路の中央分離帯の植え込みの中で、何かが動いているのに気がついた。


みゃあ…、みゃあ…


よく見るとソレは真っ黒なノラねこで、もぅもぅと排気ガスを撒き散らしながら、轟音を上げて走るクルマの流れに脅えながらも、道路を渡るタイミングを見はからっているみたいだった。

危ないっ!!

そう思ったあたしは、まだ信号が赤だったけど、一瞬クルマの流れが途切れたスキに、ダッシュで中央分離帯の植え込みの中へと駆け込んだ。


「みゃあ、みゃあ」


中学からはじまって3年以上も勉強してるはずの英語でさえ、いつも追試をくらってるあたしに“ねこ語”なんて分かるはずない。