恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~


だから、たとえセンパイがあたしのことをナンとも思ってなくても、一緒に映画を見られたっていう事実だけで、例えるなら、おかずナシでも何杯だってゴハンが食べられるくらいの幸せ気分の夢見心地だった。


「別にさ……言い訳するわけじゃねぇけど」

そう前置きしてからセンパイが言う。

「なんかさ……お前のとなりだと安心して寝られるっつーか……うまく言えねぇんだけど、そのつまり……スッゲェいいキモチで寝られたんだよな、ホント」


「センパイ……」


そのときのあたしの感情を言葉で表現するなら“嬉しい”以外のなにものでもなかった。

まわりくどい比喩とか、修飾語でデコレーションしたおしゃれな表現なんていらない。

ただ“嬉しい”のひと言に尽きる。


「いや、ヤッパこいつは言い訳だったな。オンナと映画を見に行って寝ちまうなんざ、オトコとしてはサイテーの部類に入ると思う」

「いえ……サイテーなんかじゃないです」

「サイテーじゃなくても、かなり悪りぃほうだろ? オレもスポーツマンのはしくれとして、ココはスパッと素直に謝るよ。ごめんな、わんこちゃん。ホント、ごめん、悪かった」