恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

上映開始の10分前になってシアターに入ると、あたしの指定席が男のヒトの隣だったから、自分と席を入れ替わって、あたしを女のコの隣にしてくれるセンパイ。暗闇で痴漢されないように配慮してくれたんだと思うけど、そのさりげないやさしさが嬉しかった。

映画じたいも、いつもは“あんなミーハーなの見るか!”って毛嫌いしていたハリウッド系の超話題作なのに、いざ見てみるとコレが案外面白くて、今まで喰わず嫌いしていたあたしの世界が、センパイのおかげでグ~ンと広がったような気がした。


映画が終わると売店は、老若男女のお客さんたちで大混雑。

「おしっ。じゃあ、オレ、パンフレット買ってくっから」

「ありがとう、センパイ♪」

これまでは“パシリのわんこ”だったあたしが、なんだかノッポの王子さまをパシリにしているみたいで、ヒトに使われることはあっても、ヒトを使うことに慣れていないあたしとしては調子が狂うような感じもある。


とりあえず、じっと待ってるのもなんだし、飲み終わったコーラの紙コップをゴミ箱に捨てに行こうとするあたし。

……と、そのとき……、

「あら、わんこじゃない? せっかくの夏休みに、ひとり淋しく映画を見に来るなんて、みじめなもんよねぇ。あ~、やだやだ」