「いつでもお気軽、お手軽に“チュッ、チュッ”しているミュウトには、ファーストキスの大切さが分かんないんだよ。あ~ァ、ある意味、かわいそうだね」
「あぁ、分かんねぇな。まっ、お前としても値打ちの分からん相手にファーストキスをくれてやるのも不本意だろうし、なんならソッチのにーちゃんにくれてやったらどーだ?」
「ソッチのにーちゃん……?」
「ホラ、ノッポのにーちゃんが向こうから、お前のこと、じっと見てんぞ」
ミュウトに言われて噴水のほうを見ると、そこに背の高いひとりの男子が立っていて、なぜか思いつめたような深刻な顔をして、あたしのほうをじっと見ている。
「せ、センパイ……」
そこにいたのは、なんと私服姿の井川センパイだった。
「なんだ、お前ら知り合いか?」
「あ、あたしの高校のセンパイ……」


