恋うつつ ~“好き”というどうしようもないキモチ~

……だとしたら、あたし、ミュウトに悪いことしちゃったな。

ソノ整った丹精な顔は、ホストの彼にとっては商売道具。

あたしに頬を引っかかれたせいで、もしホントにお店を休んでたらどうしよ……。


「…ッテェ……ねこだけに引っかきやがったな……」


「……ったくヒトの商売道具にキズつけやがって、これじゃ、店に出れれねぇだろーが」


「いいきみよっ。アンタなんかイケメンじゃなかったら、サイアクの男じゃんっ」


よく考えたら、あたしもけっこークチ悪いじゃん。ヒトのこと、言えないし。

それにあたし、まだミュウトにお礼も言ってない。

なんだかんだ言いながら、ちゃんとあたしのお願い聞いてくれたのに、「ありがとう」のひと言も言ってない。

ヒトに何かをしてもらったのに、ちゃんとお礼も言えないなんて、サイアクなのはあたしのほうだ。



あたしのケータイは噴水に落ちたときに溺死してしまった。