あたしに引っかかれた頬を押さえ、恨めしそうにあたしを見ながらミュウトが言う。
「いいきみよっ。アンタなんかイケメンじゃなかったら、サイアクの男じゃんっ」
「…んだとォ!」
「言われなくても、もう来ないよっ。頼まれたって、誰がこんなとこになんか来てやるもんかっ」
そう捨てゼリフを残して、あたしは『BAR 禁断ノ果実』を飛び出していった……。
「おい、一子、キスさせろよ、キス。キスさせろ、っつってんだよっ」
「イヤっ……イヤだ、やめてお願いっ……」
目にいっぱいの涙を浮かべたまま、昼間の歌舞伎町を走るあたしの脳裏に、さっきのあまりに強烈すぎる出来事がフラッシュバックでよみがえっていた。
胸がドキドキしてるのは全力疾走しているからじゃない。


