でも、正はそんな嘘さえ見抜いてしまって



『もう俺に嘘つくなって』



と眉間にシワを寄せて言う。



明らかにアタシに対してイラついている正が怖かった。



「………ごめん」




アタシ、また謝った…


謝ったってどうにもならないことなのに。





『…チッ』









正の舌打ちが聞こえた。




しかしその瞬間、優しく抱きしめられた。





あったかい‥



正の制服から柔軟剤の良い匂い。




アタシはこの行為にドキドキしながらも、

あまりの心地よさに目を閉じていた。




『俺、ぜってーお前の頭ン中から敬太消してやる。』



「うん‥」




『だから、いつか俺だけを見てくれるよな?』




「うん。」




正は魔法使いみたいだった。




アタシの気持ちを何でも見抜いて



こんなに温かい言葉の魔法をくれる。




アタシの目に自然と涙が浮かんで‥






「…うっ」



『え!?ごめん、嫌だった!?』





さっきまでの強い瞳の正は、


いつもの優しい瞳の正に戻った。




「そうじゃない‥ってか、分かんない〜ッ」




アタシは子供みたいに号泣した。




今まで敬太に恋をしてきて辛かったこと、


悲しかったこと‥






それを正が忘れさせてくれると言った。




すごく、すっごく嬉しかった‥






アタシはこの日から正だけを見る努力を始めた。



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