『…夢に、出てきたから』
「…夢??」
『ほら、やっぱ変だと思うだろ。信じなくていい』
「信じるって。だから教えてよ」
敬太はしつこいアタシに口を尖らせたかと思うと、
割と素直に話し始めた。
『なぜか俺とアイツだけな、真っ白なとこに居んだよ。
床も天井も無い空間。で、アイツが俺の正面に立って笑ってんだよ』
「…うん」
『俺が、何お前死んでんだよっつったら…』
「…そしたら?」
敬太がふと顔を上げて、アタシの瞳を見つめる。
『したらな、
俺ほんとバカなヤツで、こんなことで死んだの悔しいけど、
明日香は何も悪くないのに全部しょい込むタイプだから、
守ってあげてくれって…言われた』
顔の筋肉が、死んでいく気がした。
力が入らなくなる。
涙する力さえも。
逆に、開き直って笑う力さえも。
「…ほ、ほ、ほ、ほんとにバカだよね…正とか…
意味分かんないよね…そんなこと…正、気にしなくていいのに…」
死んだような顔の筋肉を無理やり動かして、ひきつった笑顔を作る。
敬太がそんなアタシを見て、
痛々しいとでも言うかのように目を背ける。
