「‥敬太‥」



アタシは、そっと敬太の体から離れる。


恥ずかしかったからじゃない。


嬉しかったからでもない。



正に後ろめたかったからだ。



『‥ごめん』



落ち着いたのか、もう敬太はしゃくり上げていなかった。


代わりに、

バツの悪そうな顔でアタシから目を逸らす。


そんな敬太を見つめているうちに


いつのまにかアタシの口が動いていた。








「正はさ‥どーして、先輩を殴ったの??」




『‥え』







それだけじゃない。

聞きたいことなんていくらでもある。



誰も教えてくれないまま、

アタシだけが知らないようで寂しかった。



正が一緒に帰ったときに呟いていた



【まぁ、アイツもアイツなりに‥】



その言葉がずっと気になってた。



きっと敬太は理由があって先輩を殴ったんだって。


敬太のヤツ何やってんの?


って言いながらも、本当はずっと信じてたんだよ。



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