『あっ』





千夏ちゃんは、さっと顔を上げてアタシを見た。




「どうしたの?」




『自転車…』




ああ、そっか。



ほんの数時間前、この手で、正の肩にしがみついてたんだった…。




やっぱり、受け入れられなくて


今は涙が出てこなくなった。



2人で自転車置き場に行く間、重い沈黙が続いた




「てか…カギの番号わからないよね…」



こんなときなのに

何だか、正たちが先に帰っただけのような気分で



くすっと笑ってしまった自分に腹がたつ。




『そだよね…』



千夏ちゃんも顔の筋肉を引きつらせながら笑う。



アタシたちはこれから、

どこを目指して歩けばいいのか…




分かるようで分からない。




アタシたちのこれからの未来に、


大好きなヒトがいない。




想像もつかない。




―誰か、道しるべになってください…



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