しばらくして、


千夏ちゃんたちの激しく泣く声が、すすり泣きに変わった頃。



担当医がまたアタシの前に現れ、


何やら首を傾げながら話した。




『ご自宅に電話をしても、出ないのですが…彼は一人暮らしですか?』



えっ??



わかんない…


アタシ、そー言えば、正の家行ったことないし


来るか?とも言われなかったもんだから…




しかし、隣ですすり泣いていた千夏ちゃんが、

思い出したようにアタシに言った




『そう言えば…
だいぶ前に水野が、アイツは一人暮らしだって言ってたかも…』




アタシはその瞬間に、

正が時折見せていたあの寂しそうな表情が頭に浮かんだ。



―もしかして…

家族と仲良くなかったのかな?



寂しかったのかな…。




『とにかく調べてみますね。もう遅いですから、お2人は帰ってもよろしいですよ』




アタシと千夏ちゃんは、抜け殻のようにして病院から出てきた。




未だに実感を得ることが出来ない。


きっと、これから1ヶ月くらいは無理だろう。




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