でも、今日はエイプリルフールじゃない。



アタシたちは、担当医に連れられて、


正たちの亡骸が安置されている場所へと入れてもらった。



まるで普通に眠っているような正を見たら、

過呼吸を起こすかと思うぐらい息苦しくなって




それでも、正の手のひらに触れた。




もう、あの温かさが無かった。




アタシを包み込む、優しくて温かい手。




アタシが握れば、握りかえしてくれた手。



もう今じゃ…

握りかえしてくれない。



少しずつ死後硬直が始まっているのだろうか。


指は、あまり動かなくなっていた。




アタシは、千夏ちゃんのほうをちらっと見た。




千夏ちゃんは、綺麗な顔も原型をとどめないくらいクシャクシャにゆがめて



彼氏の上半身を起こし、抱きしめている。









――ああ……





実感してしまう。




正たちは、あの数分の間の出来事だけで


こんなに簡単に逝ってしまった…。



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