その後アタシと正くんは自販機で飲み物を買い、段差に腰を下ろした。



それはいいものの、正くんはなかなか喋らない。



門限なんてのは無いけど、あんまり遅くなると怒られちゃうし…。




アタシは正くんに気付いてもらえるようにわざと腕時計を気にするフリをした。



すると、やっと察してくれたのか、

意を決したように正くんはアタシに言った。






『えっと…明日香ちゃんって好きな人いんの?』



「えっ」




その瞬間に、

敬太のあどけない笑顔がバ〜ッと脳裏に浮かぶ。



でもこの人にそんなコト言えるわけない。


アタシ、自意識過剰なんてそんなのじゃないけど



正くんが今からアタシに言う言葉は、

きっと……―






アタシは俯きながら


「居ないよ…」



と言った。





するとその時、正くんは急に


『よっしゃ!!』


と叫んでガッツポーズした。



彼は嬉しそうにしながらジュースのプルタブを開けると、


ぐびぐびっと飲んでいる。