その日、東京は春の風が吹いた。
バルコニーでタバコを吸っていると、ふわりと春の匂いが運ばれてきた。


俺、鈴木快斗は大学卒業後、社会人になり7年が経過した。

29歳という中途半端な年齢である。

オヤジとはまだ言われないであろう。

俺の仕事は予備校講師。勤務先は大手の予備校であり安定した給料も頂いてる。

春が来ると必ず思い出してしまう。

『快斗、幸せになってね。いっぱいいっぱい笑うんだよー!』

俺は今でも忘れられない。

あの時と同じ風が吹いたせいなのか?

その時だった。

「ガッシャーン!!!!」


俺はその音にびっくりしてハッと現実に戻された。

その瞬間に、タバコの灰を落としてしまった。