セシルがぴくっと肩を震わせたのを見て、ベラがすかさず釘を刺す。

「およし、エミリア。
アンタの毒牙にかけるのは、ここのお客だけでいいんだからさ。」

「毒牙? そうかしら。
私にはこの子の方が、何だかアブナイ気がするんだけど?」

エミリアはそう言って悪戯っぽく微笑むと、先の割れた小さなピンク色の舌でセシルの唇をペロリと舐めた。

「ぁ・・・」

セシルは思わず小さく声を出す。

「エミリア、おやめって!」

ベラが慌ててエミリアの肩に手を掛ける。

「ほんのご挨拶よ。BOY。

でも・・・ねぇ、覚えておいて。
私はここのトップの座は譲らない。
少なくとも、アンドロイドなんかには・・・ね。」

エミリアは、セシルの翡翠色の瞳を覗き込んでそう言うと、くるりと踵を返し楽屋のドアから出て行った。