NOEL(ノエル)


――カチ

その途端、ブオンという音とともに、床全体から立体映像が浮かび上がる。


ゆらゆらと光の矩形が揺らめくエメラルドグリーンの海。

透き通った水の底には様々な形の珊瑚が群れを成し、その間をぬうように色とりどりのトロピカルフィッシュが泳ぐ。

遠くで響く潮騒の音・・・


「・・・凄い。まるで水の上に浮かんでるみたいだ。」

アルベルトは思わず床に座り込んで足元の光景に見入る。

「これ、海って言うんだろ?
10歳の誕生日に爺ちゃんに造ってもらった。

VINOは・・・アタシの憧れなんだ。」

ヘタリと床に腰を下ろしたニコルは小さな声で呟く。

「憧れ?」

「そう。

VINOは、パパやママや、カロル伯母さんを奪った国なのに、憎くて、憎くて堪らない筈の国なのに、
時々、知りたくて、行きたくてどうしようもなくなる。」