ψ10. 憎しみと憧れと




飾りの無い部屋。

真っ白い壁には、写真や雑誌の切り抜き、書きなぐられた数式に奇妙な図形の描かれた紙が、所狭しと貼られている。

広いデスクの上に置かれたPCの周りには、それを覆い隠すほどの本やノートが積み上げられ、今にも崩れ落ちそうだ。

――カタン

アルベルトは四角いスツールを白く光る樹脂の床に滑らせると、壁際に置かれたベッドの傍に置く。

ベッドの上には、光沢のある薄いグレーのキルトにくるまった少女が横たわっている。

少女は時折ビクっと体を震わせて、その美しい額には似合わない深い皺を寄せる。

アルベルトは、少女の額に浮かぶ大粒の汗を白いタオルで押さえながら、じっとその寝顔を見つめた。