「今回、会場に居た客のほとんどがNature Coming outを起こしている。
しかも、病院に搬送された何人かは、今だに元の姿に戻れない状態が続いている。
戻れた客でも、ベラ、アナタのように体のどこかに後遺症が残っているケースがほとんどだ。」
ベラは左腕をストールで覆いながらフィンを見返す。
「ねぇ、ライヴが終わってからまだ何時間も経っていないのよ?フィン。
今回は、ちょっとセシルの歌が効きすぎただけ。
もう少ししたら、きっとまた元の姿に戻れるわよ。」
フィンは首を左右に振りながら大きな溜め息をつく。
「あなたは何も分かっていませんよ、ベラ。
これがどれほど深刻な事態なのか・・・。」
フィンはその銀縁眼鏡の下にあるグレーの瞳でベラを睨む。


