――もっと唄え! ――唄え!! ――唄え!!! ――グォォーッ 膨れ上がった声はやがて轟音となり、もはや野獣の体と化した観客たちは、セシル目掛けて押し寄せて行く。 「危ない!! アタシ、セシルを連れ出さなきゃ」 ニコルはそう叫ぶと、くるりと踵を返して走り出す。 「お待ちニコ! アンタが行ってもケガするだけだよ」 「約束したんだ、爺ちゃんと。 何かあったら、アイツを引っ掴んで帰るって!!」 ニコルの姿は瞬く間にドアの向こうへと消える。