ψ3. Nature Coming out




それは、セシルのライヴの終盤に起こった。

それまで陶酔したように、セシルの歌声に合わせて体を泳がせていた観客の何人かが、奇声をあげながら異様な行動をし始めたのだ。

彼らは体から湧き上がる何かを押さえきれない様子で、次々に着ている服を脱ぎ始める。

服の下には、ある者は金色に輝くつややかな毛が、またある者はシャリシャリと音を立て擦れ合う鱗が、またある者には虹色に光る皮膚が現われていた。

(Nature Coming out・・・
本能を曝け出すまでに興奮してるって事ね。)

ガラス貼りのスタッフルームからステージを見下ろすベラは、ふふふ・・・と口元を歪める。

(此処を防音にしといて正解。
私まで獣になってしまうところだったわ。)

「ベラ、観客の様子がおかしい!!」

ふいに発せられた声にベラが後ろを振り返ると、
そこには、ニコルが息を切らしながら立っていた。