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NANO CITYの政府管轄区域に隣接する、Air Carのファクトリー専用駐車場は、真夜中にも関わらず騒然とした空気に満ちていた。

ヴェール状の光の幕で覆われた巨大ドーム。
ほんの数時間前に出現したその会場の中からは、人々の期待と興奮の吐息が今にも溢れ出しそうだ。

「混乱を招く恐れ有り」という理由で、政府から自粛命令の出ているセシルのライヴは、数回前からヴォルケーノでの通常ライヴではなく、神出鬼没のシークレットライヴという形で行われている。

しかし、熱狂的なセシルのファンは回を追うごとにその数を増し、どこから情報を得ているのかシークレットライヴには毎回大勢の観客が押し寄せていた。


「ねぇ、ベラ
政府の立ち入り禁止区域の隣りでライヴって、いくらなんでも有りえなくない?」

ドームの天井部に設けられたスタッフルームでは、うっとりと観客席を見下ろすベラに向かってニコルが訊ねる。