「ほう。」
ゼオはそう低く呟くと、僅かに口元を緩めた。
「こんな事、今まで一度も無かったのよ。
あの子が私達に何の相談もなく家を出るなんて・・・。
やはり、メルサに任せるべきではなかったのよ。
私達がちゃんとあの子を見ていればこんな事には・・・。」
「落ち着け。」
ゼオは口調を強めてエレナを制す。
「お前はこの国の法律を覚えているか?
『VINO CITYでは、16歳を過ぎた者は個人の意志でその行動を全てを決定する事が出来る』とあるはずだ。
アルベルトはもう16歳を過ぎている。
彼が彼の意思で行動するのに、私達が口を挟む理由はない。」
エレナはその言葉に驚いて目を見開く。
「あなたは何を言っているの?
あの子は政府統括であるあなたの息子なのよ?
次期指導者であるあの子が、この国においてどんなに危険な立場にあるか、あなたは分かっているの?」


