ψ10. 地下へのベクトル




VINO政府要人専用施設『エレメントハウス』の一室では、ゼオ・イレイズがやや疲れた表情を見せながら、各閣僚への対応に追われていた。

突然のNANO政府からの『立ち入り規制強化』の申し出は、ある程度予測していた事とはいえVINO内部での人員調整が必要になる。

特に輸出入に関わる事は、相手国がNANOに限り政府の管轄となっている為、その指示は政府総括であるゼオが行わなければならない。

(NANOがこんなに早く動くとは・・・。
奴らめ、危険を察知しているというのか。

しかし、NANOの経済はVINO無しでは成り立たない。
所詮この程度の対応しか出来ないだろう。

それに・・・

もうスイッチは押されてしまっているのだ。
奴らにそれを止める事は出来ない。)


ふいに、ゼオのデスクの端末の右端が点滅し、モニターには、エレナ・イレイズの映像が映る。

その美しい顔に色は無く、焦りの表情が浮かぶ。


ゼオは、思わず眉をしかめると手元の音声モニターのボタンを押した。