ミルクはそう言いながら、作業服のベルトに着けられたIDカードを引き出すと、Air カーのドアの溝にするりとスライドさせる。

するとAirカーのドアは音も無く開き、スプーン状のシートがくるりとドア側に回転した。

ミルクはすかさずそれに腰掛けると、足をシートの中に揃えて入れ、頭を後ろに着けながら軽く目を閉じる。

それを合図にシートは前方に回転し、頭部後方から爪先に向かっていく筋もの赤い光線が流れた。

瞬時にピッという電子音と共に座席前方のモニターには『認証完了』の文字が現れる。

(さっすがミルクちゃん。)

ビルは胸の中でそう呟くとアルベルトに目で合図を送り、自分も手元のIDカードを滑らせた。


(しかし・・・
これでいいのか?
これでよかったのか?

あっちがどうなってるかなんて、僕だってはっきり掴めてないのにさ。

つか、こいつら分かってんのかよ。
あれがどんなに危険かってこと・・・

あぁもう何も考えたくねぇー。
僕今アンドロイドだし。思考回路OFFだしねー。)

そう考えるビルの脳裏にふいにジェニファーの顔が浮かぶ。