女性はふとデスクの上にあるフォトフレームを手に取ると、ダークブラウンの革で縁取られた画面の中央に指を当てる。

するとそこには背の高い精悍な顔立ちの青年と、銀色の髪をポニーテールに結った美しい色白の少女とが映し出された。

何かの研究発表の後らしく、二人の手には分厚いレポートの束がある。

そして発表の成功が、二人の表情から窺えた。

(思い出すわね。
ゼオや、カロルが居たあの頃を。

きっとあの子達には、一本の進む道しか見えていない。
その道の先に何が待っていようとも、彼らはそこから目を逸らす事は出来ない。

私はまたそれを見送る事しか出来ないのかしら。
この場所から・・・)