希望は絶たれた。

詩否も啓汰も感じてはいたのだ。

もう、自分たちしか残っていない と。


皆、『凛』に殺された と。

「…生きよう。俺達だけでも。」

啓汰が公園で呟いた。

キィ キィとブランコの音を鳴らせながら。

「……うん。凛にも、人の命の重さを話さないといけない。」

詩否は、ブランコの横にある鉄棒に座り言った。

漆黒の長い髪を風が揺らす。

時間が過ぎるのはあえて遅く感じた。如何してだろう。

もしかして 私達がもう死んでしまうから?

其の時。



「…見ぃつけたぁ…」

にぃ と不気味に笑う凛が後ろに立っていた。

紅き道を残して。手には血がこべりついていた。

汚れていない包丁を手に持って、ふふふ ふふふと笑っていた。

「…凛。よく聞いて。人の命は、取り返せない。「物」なら取り返せるよ。
 でもね、「命」は取り返せないの。殺し合いをするって言われて、止めなかったのは
  確かにいけなかった。でも、凛なら分かるよね?物事の善悪が。」

詩否は堂々と凛の前に立った。

「煩い!!!黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!
 いつもいつもいい子ぶって、いい加減ウザい!
 アンタなんか消えればいいんだよ。黒鳴詩否ぁぁぁぁぁぁ!」


人間とは思えないスピードで斬りかかって来る。

嗚呼…もう駄目だ。

ザシュッッッッッ!!グシャ…

血が飛ぶ。誰の血?






啓太の血だ。

ドサッ…

「啓汰…啓汰…ねぇ啓汰?返事して?啓汰…啓汰ぁぁぁぁぁ!」

詩否は啓汰の前に膝を付き、啓汰に必死に呼びかける。

啓汰はもう返事をしない。

逝ってしまったのだろう。


嗚呼如何して?

ヘンジヲシテヨ。