『トマトぉ…』


泣きながら呟いた。


返事とかはない。
呪文の効果なんか期待してない。


その時。


ガサっ


いきなり音がしたからびっくりした。


その拍子に手に持っていた鞄が落ちる。


幸い、濡れてないところに落ちたので雨で汚れる事もなかった。


拾い上げようと手を伸ばす。


しかし、鞄はいきなり伸びてきた手に持ってかれた。


ふと、その手の方向を見上げた。



『…中島…。』


「…、はい。」

傘を2本もった中島は息切れしていて拾ったあたしの鞄をあたしに差し出した。


よく見ると雨が降って涼しくなったのにうっすら汗も浮かべている。



『どうしたの?』


「お前を探してたのっ!」


そう言ってすとんっと石段に座る。


『…ありがと。』


小川さんは?


聞きたい気持ちを抑えてあたしはお礼をいう。


中島はニッと歯を見せて笑う。


ドキン