一人目の男は、お世辞にも几帳面とも清潔感のただよう人間とも言えなかった。

何事にも迷い、小さな事にも悩む。
私より女々しくて、金が無いくせに、高い物を買って寄越そうとする変に見栄を張る男だった。

それがひどく嫌だった。物で私を吊るのかと、捻くれた私は胸中で男を嫌悪した。

それでも一緒に居たのは私が見栄を張りたかったからだ。

嫌だと感じても、口ではいつでも「好きだ」と謳ってやる。

誘い目で笑ってやる。


「好き」と言う言葉の意味を解らない私は、ただただそれを口にする。


惜しみ無く、恥じる事無く。

音を空気に乗せるだけ。


別れるのにそう時間はかからなかった。何が原因だったのか、全然覚えていない。酷く下らない事で私が男を振った…そんな事くらいしか覚えていない。

身体の関係をもっても、

手を繋いでも抱き締めあっても、


部屋に泊まりに行ったって、結局私は男の名前を正確に覚えてはいなかった。

4ヵ月一緒にいても、名前すらちゃんとまともに思い出す事が出来ずにあだ名で呼んだ。


4ヵ月一緒に過ごしても、一人目の男は私にとってそういう存在でしかなかった。


クリスマスの少し前


街が宝石箱をひっくり返したように華やかに聖夜までのカウントダウンを始めた頃


私の一回目の恋は、あっさり終わった。