付き会って初めてのデートは、彼の家だった。


彼は不思議な香を持って居る男だった。

部屋もその香で満ちて居て、此所の住人が誰かを再度認識する。

部屋に着くと、彼の手は自然にTVのリモコンに伸びる。初めて彼女を連れて来たというのに、いきなりTVか…なんて、飽きれた。

そんな中でも、男と女とは不思議なもので。
ワイドショーの流れるその空間でもイチャつく事が出来る。


私にしてみれば、ママゴトみたいな恋愛ごっこ。

少し甘えれば、デレりと顔を緩めて何でも許す彼の姿が面白くて仕方ない。

けれど、男女同じ部屋で、ある程度盛った年齢にも関わらず『何もありませんでした』と言う方がおかしい。

初体験も彼だった。

何も知らない――無知な男。

何も知らないが故に、初体験は苦痛以外の何でもなかった。
こんな行為を好んでする人間の気持ちが分からないと思った。

そして同時に『汚れた』と思った。

自分で脱いでて何を吐かすんだとも思った。

けど、処女を喪失した所で何の感情も沸かなかった自分が、面白くてたまらなかった。

薄暗い天井を、彼の肩越しに見つめながら胸中で自分に吐き捨ててみた。

この人間のクズ…って。

私は元々『自分』というものに対して最も執着がなかった。

いつも第三者の視点で自分を見ている。
その日。

汗っかきなのだと、はにかんで言った男の部屋で

寒い程の冷房の中で、慣れない動きで腰を振る


事情中、若干汗ばむ男の背にしがみつく、うろん気な目をした馬鹿な女が居た。