「まずは、抱き合うシーン…」
夏川大地が言う。
……え……
「ま、待って!」
いきなりですか?
「忘れたか?恋愛の話だ。」
「そう…だけど。」
いきなり…。
「それくらい慣れとかないと。お前、女優になりたいんだろ?」
「う、うん。」
そう…だよね。
夏川大地が相手でも
ちゃんとやるのが女優。
いきなりすぎて
戸惑うけど…。
でも…
「い、いいよ!」
私は夏川大地に言う。
すると
――ドキン
夏川大地は私を強く抱きしめてきた。
だ、だめ!
意識したら。
演技、演技。
「最初はこれくらいだからな。大丈夫か。」
夏川大地は私の身体を離すと言う。
「…里緒?」
夏川大地は私を見る。
やっぱり
意識……。


