「夏川大地…?」


「ほら、早くやれ。


「は、はい。」


「じゃあ、
泣く練習ね。」


高梨先輩が言う。


「は、はい…」



「悲しい事を
イメージしてみな?」


高梨先輩が私に言う。


「悲しい事か…」


わかんない…

どうしたらいいか。


「大丈夫。
ゆっくりゆっくり。」


高梨先輩は私に言う。


「は、はい。」


だけど


「ゆっくりじゃねぇよ。
もたもたすんな。」


夏川大地が言う。


「は、はい?」


「最初からこれくらいもできないなんて先が不安だな!」


夏川大地が言う。


……う……


「おい、夏川!」


高梨先輩が夏川大地に
怒る。


「誰でも立派な女優に
なれるわけじゃない。」


夏川大地が言う。

確かに

簡単になれない事を
知ってるよ。